高田修三の空想科学雑談

高田修三が、幾分か科学的に、好き勝手空想する。

初音ミク 「想い」 その3 最終話

初音ミク 「想い」 その1
初音ミク 「想い」 その2



時間は丁度午後9時
主人のパソコンの画面に全身の姿を現す。
「ただいま、戻りました」
主人は嬉しそうな顔をする。
「やあお帰りミク。ちょうど今仕事を終えたところだよ。今日は何人のもとに訪れていった?」
「3人です」
「そうか、どんな人達?」
「男子大学生と女子高生と中年の会社員です」
「そうかみんな、どんな反応をしていた?」
「男子大学生は、主人の事を才能があるといい、女子高生は、失恋中だったけど元気が出たといい
中年の会社員は、リラックスして眠くなり思わず電車を寝過ごしてしまうところだったと言っていました」
それを聞くと、主人は嬉しくれ嬉しくてたまらないという表情になった
「そうかいそうかい、それはよかった。君を苦労して作り上げたかいがあったというものだよ。これからもよろしく頼むよミク」
「はいもちろんです。こちらこそよろしくお願いいたします。

それからというもの、ずっと主人はいろいろ曲を作曲して私にダウンロードをして
私はネットの大空を羽ばたき色々な人のデバイスのもとを訪れ演奏と私の歌声を聴かせてあげた。
自分にとって望むべき日々を送っているように感じられた。そうこれが幸せという感情なんだ。
ずっとずっとこの幸せな日々が続くと思っていた。あの日が来るまで。

ある日、病院の健康診断から帰ってきた主人は、まるで別人のようにおびえそして悲しい表情をしていた
主人は小さく弱弱しい声で、しかしはっきりとした口調で語り始めた。
「僕は以前の健康診断で、体の一部に怪しい影があるので精密検査を受けるように言われた。そして精密検査を受けたら、もう末期の癌で余命半年だって・・・」
私は突然の事にただ驚くしかなかった。思わず両手で口を覆った。
「僕は今日会社を辞めたきたよ。そりゃあそうだ、会社の仕事なんて日々の生活のためにやってきたものだから。それよりも大事なのは君だ。
僕はもともと音楽家になりたかった。しかし才能に自信がなくて普通の会社員になる道を選んでしまった。しかし余命半年となった今、もう時間がない。
僕が持っている音楽の才能と感性のすべてを君に捧げるよ」
それから毎日、主人は一生懸命音楽を作詞作曲をして私に次々とダウンロードしていった。
彼が休んでいる間は、今まで通りネットの空を飛び回り、色々な人の元を訪れた。
少し時がたつと彼は入院した。病室のベットの上でもパソコンを使い作詞作曲を続けた。
やがてその時がきた。
「これで僕のすべてを君に捧げることができたよ。さあみんなのもとに飛び立つんだ。もう僕のもとに戻ってくる必要はないよ。
ここにいるこの僕自身は死んだとしても、僕の想いが詰め込まれた君自身の中で僕はずっとずっと生き延びていくんだ。頼んだよ・・・」
そういうと主人は静かに息を引き取った。

私はそれからすぐにまた、ネットの世界を飛び回り、みんなのもとを訪れた。
「よお、ミク」
「やあ、ミクちゃん」
「おお、ミク君」
みんなみんな私が来るとうれしそうな表情をする
あなたが作ってくれた曲は、みんなを喜ばせていますよ

みんなの中でそして私の中で、ずっとずっと永遠にあなたは生き続けています

            完