高田修三の空想科学雑談

高田修三が、幾分か科学的に、好き勝手空想する。

人を見るということは自分を見ること 「ホムンクルス」 山本英夫

他人を観察するということは、突き詰めていくと自分自身を見つめなおすことではないか?
そう思わせられる作品であった。

あらすじ

主人公である名越進は、ある医大生伊藤学に奇妙な実験を持ちかけられる。
それは頭蓋骨に穴を開けて、超能力が芽生えるか試させてほしいというものだった。
手術を受けた名越はあるとき、右目を隠しながら人物を観察すると、奇妙な姿に見えることに気づく



まずこの作品の元となるアイデアが逸脱だった。
超能力を手に入れた名越が、観察した人間の潜在意識を具体的に見えるようになるというのが。
人の心を読む超能力を扱った作品は山ほどあるけど、このタイプの能力はこの作品が初めてだ。
またそれを絵を描いて漫画という方法で描いたのは素晴らしい。
人間の潜在意識の複雑さをよくぞここまで表現できたと思える
作者の画力、表現力には脱帽だ。

そしてその表現力がストーリーと組み合わさって、素晴らしい物語がつむぎだされた。
少年時代の出来事が原因でヤクザにまでなってしまったオヤジの、心のつかえをほぐすストーリー
↓彼はロボットで武装した少年として描かれた

母親の言いなりになって、「自分」を保てないでいた女子高生に、自分を保たせることを教えるストーリー
↓彼女は砂のような物体構成されている姿で表現されていた。

そして物語の中盤から、その能力の導きによって、自分の過去と向き合うことになるのだ。
いったい自分は何者なのか?
彼は整形手術を受けていた。
手術を受ける前の自分はいったいどんな人間だったのか。

さらに物語の後半になると、とある女性と出会い、自分自身の過去と対決することになる。
ここら辺の展開は本当に見物だ。
実はその女性も整形をしていたのだが、やがてその女性の整形する前の顔が見えるようになる
15巻の、女の整形する前の顔と、名越の整形する前の顔が対面しているシーンは本当に衝撃的だった。

そして物語は収束に向かっていく・・・
この終わり方はハッピーエンドなのだろうか?
それは読者であるあなた自身が判断してほしい。

ホムンクルス 1 (BIG SPIRITS COMICS)

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ホムンクルス 15 (ビッグコミックス)

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