高田修三の空想科学雑談

高田修三が、幾分か科学的に、好き勝手空想する。

小さな体と大きな銃に想いをこめて 「ンスリンガール」 会田 裕

なんと残酷で切なくそして美しい物語だろう。

舞台は、近未来のイタリアに設定された「公益法人社会福祉公社」という組織。
表向きは政府主催の身体障害者支援事業である。
だがその実態は、様々な事情で半死半生の大けがを負った少女たちの身体を機械でおきかえ、政府の裏の仕事に従事させている組織である。
少女たちはそれまでの自分の生きてきた記憶を消されてしまい、「条件付け」と呼ばれる洗脳によって、
人を殺すことに罪の意識をもたず、相棒となる成人した男性の担当官に絶対的な忠誠と持つよう仕向けられていく

まず最初に目を引くのはその残酷さだろう。
次々と目標を殺害していく先頭シーン、そして少女たちの辿ってきた軌跡も残酷だ。
こんな残酷な世界に、まだ幼い女の子たちがいるなんて、思わず目を覆いたくなってしまうかもしれない。

でもそんな世界にも希望が垣間見える。
少女たちはたとえ人殺しのスペシャリストとなっても人としての感情をすべてを失ったわけではない。
相棒となる大人の男性とのふれあい。
夜に一緒に星を眺めたり
プレゼントをもらったり
食事をしながらおしゃべりをしたり
普段は過酷な任務を淡々とこなす彼女が、ふと見せるそんな女の子らしい一面がなんとも愛おしい。

また少女たちは、以前のの記憶を失っているのだが、人から自分の昔ことを聞かされたり、なんらかのきっかけで思い出したりする。
みんなそれぞれがすさまじい過去を持っている。
それでも彼女たちは、自分が背負っていた過去に愕然とはするが受け入れ行くのだ。
それがなんとも切ない・・・

また彼女たちの相棒となる担当官も重い過去を持っている。
この物語はみんな心に痛みを抱えている。

繰り返すが、この物語は残酷だ。
でも物語が残酷であれば残酷であるほど、話の切なさ、そして美しさが増すのではないのだろうか?
それはちょうど闇が深ければ深いほど、小さな光でも明るく見えるようだ。

物語の終章は、決して安易なハッピーエンドではない。
しかしこれ以上の終わりはないだろう。

少女たちに安らぎあれ

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