圧倒的な残酷さの中に温かさが織り交ぜられた物語 「寄生獣」 岩 明均
これは地球外生命体と人間との壮絶な戦いと、友情を描いた物語
あらすじ
ある日地球の外から未知の生命体がやってくる。
その生命体は、人間の体の中に入り込み、脳を侵食し、完全に乗っ取ってしまう。
ある一匹の「それ」もそうなるはずだったが、主人公である泉新一の脳を乗っ取ろうとして失敗してしまう。そのかわり右手を乗っ取る。おかげ右手は完全に異型化してしまった(ちなみにその後ミギーという名前を与えられる。
そしてそこから主人公はさまざまなことに巻き込まれるのであった・・・
まず目に付くのなんといっても残酷なシーン・・・
そして人間達との壮絶な戦い
この寄生体達は、食欲を満たすために、なんら躊躇なく人間を食べていくのだ。
しかし、新一に寄生したミギーだけはそういうことはしない。
主であるミギーが、残酷なことをしないように引き止めているからだ。
そしてこの、新一とミギーとの交流こそが、この物語の暖かい部分なのだ。
はじめは宿主であり新一に対して、感情など持ち合わせていなかったが交流を続けていくうちに「友情」ともいえるべき感情が芽生えていく・・・
そしてもうひとつ例外的なのが、田宮良子に取り付いた寄生体(後に田村玲子と名乗る)
彼女は人間という言う生き物について感心を抱き、なんと子供を身ごもってみたのだ!
そして自分で育てていき、我が子を観察していく。
そして彼女の最後は、警官達に発砲されても身を挺して、我が子を守り、新一に意味深な言葉を残して死んでしまう。
なぜ彼女は最後は逃げることも、警官達に抵抗することも多なかったのだろうか・・・そしてなぜ我が子を守り通したのか・・・これは各読者によって解釈は異なるかもしれない。
それにしてもこの物語は本当に感動的だ。
ただの地球外生命体と人間との安っぽい交流物語ではない。
残酷な描写はいくらでもある。
でも、いやだからこそ、この残酷で人間を食らうことしか本来興味を示さなかった寄生体の中にも、人間に理解を示そうとした者がいたというエピソードの温かみが際立つのだ。読み終わった後には、後味の悪さはない。なんだか不思議にジーンとくる感傷が残る。
人間とは何か、そういう問いかけにあなたは答えられるだろうか?
- 作者: 岩明均
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/01/01
- メディア: コミック
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