癒し系SFファンタジー 「ARIA」 天野こずえ
ああ癒される・・・不思議な魅力をもった作品だ。
本書は、人が住める水の惑星となった火星の、街中のゴンドラの漕ぎ手(ウンディーネ)である少女の物語。
火星に人が住むといえばSF?
SFといえば小難しくて堅い話?
そうお思いの方、ご安心を。
この漫画は、ふんわーりとしていて、決して難しくなく、考えなくても感じながら読める作品である。
舞台は火星なのだが、街中の風景は、イタリアのヴェネツィア風。
もうねこの世界観がたまらないのよ。
背景とキャラクターの絵もうまいし
そしてストーリー
主人公は、いろいろな人を乗せて、いろいろな物語を紡いでいくのだが、どのストーリーもほんわかしている。
醜い描写などどこにもない。この漫画を読んでいると、現実の世界の汚いこと、どろどろとしたことを忘れさせてくれるかのようだ。
そりゃウンディーネである主人公の水無灯里は、感動して「恥ずかしいセリフ」のひとつやふたつも言いたくなりますよ。
(そして同じくウンディーネである藍華に「恥ずかしいセリフ禁止!」と突っ込まれるのだが)↓
「でっかい春一番だねー」
「恥ずかしい台詞禁止」ビシッ!
このやり取りもたまらない!たまらない!(大事なことなので二度言いました)
でもこのすばらしい物語もやがては終わりがやってくるのだ・・・
水無灯里と藍華は、「半人前」のウンディーネであるが、いままで船を漕いできたのは「一人前」になるためでもあった。
そしていよいよそのときが来たとき、二人の師であったアリシアは現役のウンディーネを引退することを決意する。
それは今までのように、同じ職場で楽しく和気藹々と、一緒に働くことはできなることを示していた。
そしてそんな彼女を優しく抱きしめて諭すアリシア
そうして灯里は現実を受け止める
「アリシアさんが現役を引退するって教えてくれたあの日・・・もっと素敵な未来の自分に逢いに行くって決断したんですよね?
なら私にその分かれ道まで笑顔で見送らせてください。さよならのその瞬間まで・・・私 笑顔でいたいんです」
感動の別れを遂げる。
といってもアリシアはちょくちょく顔を見せる
やがて月日は過ぎ、灯里にも後輩ができ、かつてのアリシアと同じような立場になる
こうして穏やかな日々はずっとずっと続いていくのだった・・・・