高田修三の空想科学雑談

高田修三が、幾分か科学的に、好き勝手空想する。

「仕事とゲーム」【ショートショート】

俺はテレビゲームが好きだ。暇があればずっとゲームをしている。
仕事の方は嫌いだ。とある自動車メーカの下請けをしてる中小製造業の工場で働いている。まったくつまらない仕事だ。だからいつも仕事中は早く仕事が終われ終われと思っている。ゴールデンウィークが終わって、いよいよ今日から仕事だ。ああ鬱だ・・・

だが今日会社に行ってみると、会社ががらりと変わっていたのだ
まず工場や事務所などの建物の外見だ。
前は無機質だったのに、まるで遊園地みたいな色とりどりの模様が配色がされ、変なオブジェが付いている

事務所の雰囲気が変わった、以前の味気ない机や椅子ではなく、オシャレな色とりどりの机や椅子になった。
社内託児所が設置された。これからは職場に子供を連れてきて、仕事をしてもOKになった

工場内も変わった
ピカピカに綺麗に掃除され、工作機械も色とりどりに配色されている
そして空いていたスペースにはオシャレなソファが置かれている。
うちの工場では2時間ごとに10分の休憩があるが、
休憩中にこのソファでゆったりとくつろげそうだ

いったい何が起きたというのだろうか?
なんでも社長の「ゲームみたいな感覚で仕事ができる、楽しい職場づくり」というのを、今年から始めることになったようだ。
この社長、先代の社長の息子で、後を継いで社長になったのだが、
元々芸術家気質と言うか、遊び人気質というか、変わっているところがあるから、
まったく妙な事も考えるものだなあ

さてそろそろ、やりたくもない仕事を始めるか
作業着も変わった、工員の俺たちはグレーの作業着で仕事していたのに、
今日からまるでコスプレみたいなカラフルな服装で作業することになった。
工作機械で、物を削っているときは、どこからともなく、
心が癒されるようなBGMが流れている。
うちの工場では、一時間毎に作るべき個数が、ノルマとして設定しているのだが、
それを達成できると、RPGでレベルアップした時のような効果音が流れてくる

むむむ、機械の調子がおかしい
こういう時は保全とよばれる、機械を治してくれる担当の人を呼ぶ
すると、保全の人が「やあ仲間よ、お困りの様子だが、どうしたんだい?」
と笑みを浮かべながら、話しかけてきた
なんなんだこのテンション?どうやらこうやって明るく振舞うのも
「楽しい職場づくり」の一環らしい

保全の人が機械を直している間は仕事ができない。
これからはその間は、新しく置かれたソファで休憩してよいことになった。
俺以外にもソファに座っている人がいた。
同じように機械の調子が悪くて休憩してるのだ
俺は、機械が治るまでの間にその人とずっと雑談をしていた。

そんな感じで一日が終わった。
なんだか本当にゲームをしているような感じで仕事ができた。

俺はやがて仕事に夢中になっていった。
うちの会社はどんどん、職場をゲームみたいに楽しめるように改善していくから、
仕事が楽しく感じるようになってきたのだ。

そういえば最近ゲームをやっていないな・・・
このゲームどこまで進んだっけ?
そうだ、ボスを倒すところまでだ。
ボスを倒すためにはレベル上げをしなくてはならない
レベルを上げるためには延々と雑魚敵を倒さなくてはいけない

ああ、なんだかこのゲームの方が仕事のように思えてきたよ・・・・