高田修三の空想科学雑談

高田修三が、幾分か科学的に、好き勝手空想する。

連載小説 「永遠なる命へ 1」

田中純也がそのメールを受け取ったときは信じられない気持ちだった。
何度かパソコンの画面を確認したが、間違いなかった
日本の国家的プロジェクトである「不老不死プロジェクト」の被験者に田中純也が選ばれたのである
彼は20歳で普通の大学生である。
このプロジェクトに応募したのはちょっとした好奇心からであった
どうせ自分は応募には当選しないだろうと思っていた。
「母さん、僕、不老不死プロジェクトの抽選に当たったよ!」
彼は、自分の部屋から出て、居間にいた母に報告した。
「本当かい?それは。間違いじゃないんだろうね?」
母は当然ながら驚いていた。
「ああ、間違いないよ。何度も確認した」
彼は興奮気味に答えた
「こんなことってあるんだねえ・・・」
母は感心したような口調で言った。
「というわけで、大学は1年間休学するけどいいよね」
「ええ、そのことについては、ちゃんと約束したからね。でも本当に当たるとは・・・」
「父さんが帰ってきたら、父さんにも報告しなきゃ」
「そうねえ。それにしても、こんな国家的なプロジェクトに参加するんだ。
マスコミとかが家に押しかけてこないかねえ・・・」
「大丈夫、実験をするために、研究病院に入院してから、
 僕がこのプロジェクトの被験者であることが、初めて公にされる。
 マスコミは病院にくる。だから質問に答えたりするのは、僕が全部やるから」
「変なふうに答えないでちょうだいよ」
「大丈夫だよ。僕はもう大人なんだから」
そう、田中純也は成人である
成人であることが、このプロジェクトに応募する条件の一つであった。
「後悔はしない?」
彼の母がそう尋ねた
「え?」
純也は、驚いた
「やっぱり、このプロジェクトに参加しなければよかったって、後になって後悔しないかってこただよ」
母は念を押すように言った。
「大丈夫だよ。だって世界で初めて不老不死になれるチャンスなんだよ?
 そんなプロジェクトに関われるなんて、ワクワクしてしょうがないよ」
純也の目は輝いていた
「それならいいんだけど・・・」
母は不安そうにそう呟いた。