高田修三の空想科学雑談

高田修三が、幾分か科学的に、好き勝手空想する。

苦しい時は声をあげて「助けて」という必要がある「助けられる力」について

大津市の中学校二年生男子がいじめによって自殺したというニュースが日本中で話題になっている。こういうニュースを聞くと本当にやるせない気持ちになる。だから僕の想うことをこれから延々と語っていきたい。

日本の教育や社会での価値観では苦しい事があった時には、それから逃げたり誰かに助けを求めたりということをするという考え自体がほとんどない気がする。
ただ「独力で立ち向かえ」というのが今の社会の価値観ではないだろうか?
そして教育に至っては独力で立ち向かう力すら養う教育を施せていない気がする。

僕は学生時代はごく平凡に過ごしてきたが、就職してから本気で人に助けを求めたことがある。その時の体験を詳しく説明したい。

僕は、大学を卒業した後に、自動車部品を製造する中小企業に就職した。
元請けである会社の、自動車工場に出向させられたことがあった。
その自動車工場はみんなが、「あそこはキツイよ」と言っていたので、僕は行きたくなかったが、当時はうちの会社は仕事が減らされていたので強制的に出向という形になった。
そしてこの自動車工場での勤務がものすごく辛いものだった。

新装増補版 自動車絶望工場 (講談社文庫)

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残業は毎日2時間あったが、全力で動き回ってもラインに追いつかないくらいだった。
10時間ずっとマラソンをしているかのような感覚だった。
そして作業に遅れると、ライン長から罵声を浴びせられる。
なんとか僕は耐えていた。「この出向はずっと続くわけではない、なんとか終わるまで耐えるんだ」と。
しかしある日から、妙なことに右腕に力が入らなくなったのだ。
おかげで全然仕事ができなくて、ラインでは遅れまくりである。
僕は右腕に力が入らないことを必死に訴える。でもライン長は僕がやる気がないから作業をしないのだと思ったらしい
当然ライン長はものすごい罵声を浴びせてくる
特に一番ショックだったのが「お前の会社がお前みたいな奴を雇ったのは、単にその時景気が良かったからだ。お前の能力じゃないんだからな」と言われたことである。
僕はこの理不尽についに限界を感じた。

うちの会社で総務部長にに「出向の契約を取り消してほしい、なんとかして会社に戻りたい」と言った。
でも総務部長は難色を示していた。
僕は「ついに会社を辞めないといけないのか・・・」と絶望的な気分になった
その時たまたま常務が通りかかった。
この常務はとても人情味のある人で「やあ、出向先での調子はどうだ」と尋ねてきた。
僕は事の顛末を詳細に語った。
すると常務は「言葉の暴力は許せない。俺が会社に行ってなんとかしてやるよ」
と言ってくれたのだ。
そして次の日に実際に会社に行って直談判してくれたのだ。

そうすると何が起きたか。
仕事中、相変わらずラインで必死に仕事をしていると。ライン長よりももっと偉い人である課長から呼ばれた。僕はラインを抜け出し、別の部屋に案内された。
その課長は言った「いやあ昨日、君の会社の人から、「うち会社の社員をひどい目にあわせているんじゃないか」と言われてねえ。詳しいことを聞きたいんだ」
僕は、びっくりした。そしてすぐに詳細を話した。
すると「そうかわかった。じゃあそのライン長と話をしてくるよ」と言った
僕は一瞬ドキッとした。そんなことになったら、ライン長になにか報復を受けるのではないかと不安になったからだ。
でもそうはならなかった。

課長ががライン長と話をつけてからは状況は一変した
ライン長が僕が追いつかない仕事の分を手伝ってくれるようになったのだ。
しかも今まで罵声を浴びせかけてきていたのに「できる分だけやればいいよ」と言ってくれたのだ。
さらに、課長が僕をその工場の保健室に連れて行ってくれたのだ
「右腕に力が入らないのは、作業の負担のせいだと思う。検査を受けたほうがいいよ」と。
僕は検査を受けた。結果は腱鞘炎だった。保険医が最低でも2週間は作業の負担の軽減をするようにと課長に伝えた。課長は了承した。
そして別の部屋で話をすることになった。
課長は「どうもうちの部下が君に理不尽な目に逢わせたようだ。どうも申し訳なかった」と言うとなんと頭を下げてくれたのだ。
僕は本当にただただ驚いて「いえいえ別にいいです何もかも解決しましたし」と言った。
それで物事は解決した

そして僕は、それからの出向期間を満了して、無事に今の会社にまだ勤めている。
以上が、僕の「助けを求めて、助けられた」経験だ。

世の中には色々な人がいる。
冷たい人も当然いるが、中には温かい人もいる。
もしかしたらそういう人が助けてくれるかもしれない。
だから何か困ったり苦しいことがあったら大きな声で助けを求めるべきである。
助けを求めることは恥ではない。みんな助け合って生きているのだから。
そして絶対に自殺なんかしないように。ただそれだけを願う。