高田修三の空想科学雑談

高田修三が、幾分か科学的に、好き勝手空想する。

器用に生きられなくたっていいんだよ 「毎日かあさん4巻 出戻り編」 西原理恵子

西原理恵子
彼女の作品を読んでいると、しみじみと感じることがある。
それは「器用に生きられなくたっていいじゃない」ということである

それを最も象徴するのが、本作「毎日かあさん4 出戻り編」である。
できればこれを読む前に、ぜひ1巻から3巻も読んでおいてもらいたい。
そうすればこれを読んだとき、読者により大きくくっきりとココロの中に印象を残してくれるだろうから

毎日母さんシリーズは、作者西原理恵子と二人の子どもと、元夫にして子ども達の父親である鴨ちゃんこと鴨志田穣との、ドタバタお笑いエッセイ漫画である。
彼女は子育てをしていく上で様々な課題にぶつかる。
しかし、それをこのシリーズでは、明るく面白く描いていく。
普通の母親であれば、本気で悩んでしまうようなことも彼女はケロリとして漫画のネタにしてしまうのだ。
それを見ている、笑えて笑えて、そして「ああこんなに不器用に生きている人達がいるのだ」という安堵感を読者に与えてくれる。

1巻2巻3巻と読んでいるだけでも彼女の類まれなる作品を感じられるのだが、その上にこの4巻である
本作品では、西原の元夫にして子供たちの父親である、鴨志田穣氏が、亡くなる!

戦場カメラマンであった鴨志田穣氏は亡くなるずっと前から、重度のアルコール依存症で、
西原から何度も何度も叱られてもお酒を飲んでしまう。
それでも子ども達は、父親を愛する。
その姿がなんとも、いじらしい・・・
無礼を承知で言わせて貰えば、彼は典型的な「ダメ男」だろう。
そして彼は癌に侵されて若くして亡くなってしまう。
彼の人生は典型的な「ダメ人生」に類されるかもしれない
でも本作品は教えてくれる。
「それでもいいじゃないか」

最後の別れの日に、彼は彼女に
「ありがとう。君にあえてしあわせな人生だった。もう悔いはないよ」
という言葉を残してくれた。
彼が亡くなったとき、彼女は彼のためにいつまでも泣き止まなかった。
アルコール依存症の夫に散々苦労させられた。
それでも彼女は彼を愛してくれたのだ。間違いなく愛していた。疑いようも無く
また彼は言っていた。
「子供を傷つけずにすんだ。人として死ねることがうれしい」と
周りの人が、彼のことをどう思うかなんて関係なんてないんだ。
本人が幸せなら、人生は100点満点である。
子供に愛され、妻に愛され、亡くなったら、ひたすら涙してくれる。
こんな幸せな最後があるだろうか?
不器用な生き方しかできなかった彼だが、それでも幸せな最後を迎えられたのだ。
「不器用な生き方しかできなくてもいい」
このことを彼が、自分の身をもって我々に教えてくれたのだ


西原理恵子(一番右)と鴨志田穣(一番左)

この作品と出会って生きるのが楽になった気がする。
ありがとう西原理恵子
ありがとう二人の子供たち
そしてありがとう鴨志田穣 あの世(おそらく天国だろう)で安らかに